「原稿用紙を目の前にして、一向に手が動かない…」
「やっと書いたと思ったら、『楽しかったです。』と書いて終了…」
そんなお子さんの作文に、頭を抱えていませんか?
私も中学校で国語を教えていたころ、「何を書けばいいか分からない」と手が止まってしまう子をたくさん見てきました。
でも、作文が書けない=文章のセンスがない、ではありません。
多くの子は、頭の中にある出来事や気持ちを、どう言葉にすればいいのか分からないだけなのです。
そこで試してほしいのが、いきなり書かせるのではなく、書く前に親が「ヒアリング」すること。
今回は元国語教師の視点から、「楽しかったです」で終わる作文を変える、親の質問のコツをご紹介します!
子どもが作文で「楽しかったです」しか書けない2つの理由
子どもが原稿用紙を前にフリーズしたり、「楽しかったです」の一言で終わらせてしまったりするのは、決してやる気がないからではありません。
子どもなりに書こうとしてはいるものの、手が止まってしまう背景には2つのつまずきポイントがあります。
①「何を書けばいいの?」と正解を探してしまう
算数のように答えが決まっている勉強に慣れている子は、作文では無意識に「先生や親が納得する『正しい答え』を書かなきゃ」と思い込んでいることがあります。
たとえば、家族で遊園地へ行った日の作文。
本当はこんなことが心に残っているかも
・ジェットコースターが怖くて乗りたくなかった
・弟がアイスを落としたのがおもしろかった
・並ぶ時間が長くて嫌だった
こうした場面が一番心に残っていたとしても、「こんなマイナスなこと、作文に書いてもいいのかな?」と不安になり、ブレーキをかけてしまうのです。
その結果、選びやすいのが、
という一番無難な言葉です。
でも、作文には「きれいな感想」ばかりを書く必要はありません。
「怖かった」「悔しかった」「びっくりした」「本当は嫌だった」。
その子にしか書けない気持ちこそが、作文を一番おもしろくする材料になります。
②思い出が「大きなかたまり」のままになっている
もう一つの大きな原因が、一日全体の思い出が「大きなかたまり」のまま頭に残っていることです。
大人が「休みの日の作文を書いてね」と言うと、子どもの頭の中は、
という大雑把なイメージで埋まってしまいます。
でも、実際の一日を細かく分解してみると、たくさんの出来事があったはずです。
✓ 入口で大きなジェットコースターを見た
✓ 乗る直前になって怖くなった
✓ お母さんに「大丈夫!」と言われた
✓ 思ったより速くて叫んだ
✓ 降りたら足がフラフラした
✓ でも、もう一回乗りたくなった
これだけ材料が出てくれば、「楽しかったです」の一言では終わりませんよね。
作文が苦手な子は、記憶を細かく分解する方法を知らないだけ。
だからこそ、頭の中の「大きなかたまり」から材料を一つずつ取り出してあげるサポートが必要なのです。
原稿用紙に向かう前に!子どもの本音を引き出すヒアリング術
作文が苦手な子に、いきなり「じゃあ書いてみよう!」と言っても、なかなか鉛筆は動きません。
まずは原稿用紙を横に置いて、親子で「会話」をするところから始めてみましょう。
ヒアリングのポイント
親が答えを教えるのではなく、質問しながら子どもの中にある「作文の材料」を見つけてあげること。
家庭ですぐにできる3つの聞き方をご紹介します。
①「どうだった?」ではなく「一番〇〇だったのは?」を聞く
「今日のキャンプどうだった?」と聞かれたら、大人だって「楽しかったよ」と答えてしまいますよね。
子どもなら、なおさらです。
そのため、質問するときは、「一番〇〇だったのは?」と場面を絞って聞いてあげるのがコツです。
「今日のキャンプ、どうだった?」
「一番笑ったのはいつ?」
「一番びっくりしたことは?」
「一番ドキドキしたのは?」
「一番おいしかったものは?」
「キャンプ、楽しかった」という大きな思い出から、
という具体的な場面を引き出せます。
作文を書くときに必要なのは、実はこうした小さなエピソードです。
「もっと詳しく思い出して」と急かすのではなく、親の質問で思い出す範囲をキュッと狭めてあげましょう。
頭の中のアルバムから、その瞬間の映像をピンポイントで探し出せるようになります。
②「そのとき、どうだった?」を五感に分けて聞く
書きたい場面が決まったら、次はそのときの様子をもう少し詳しく聞いていきます。
ここで役立つのが、見たもの・聞こえたもの・匂い・味・触った感じ(五感)です。
たとえば、子どもが「BBQでお肉を食べたのが楽しかった」と話してくれたら、そこからさらに五感を刺激する質問を重ねてみましょう。
こんなふうに聞いてみよう
見たこと:「焼ける前のお肉って、どんな色してた?」
聞いたこと:「網の上に乗せたとき、どんな音がした?」
匂い・味:「タレの匂いしてきた? 食べたとき、熱かった?」
すると、
「お肉を網にのせたら、ジューッて音がした」
「煙がこっちに来て、目が痛かった」
「焼きたてを食べたら、めっちゃ熱かった!」
と、そのときの情景がどんどん出てきます。
子どもに「もっと詳しく書いて」と言っても、何をどう詳しくすればいいのか分かりません。
「どんな音がした?」「触ったらどうだった?」と具体的に聞いてあげるだけで、思い出をスムーズに言葉にできるようになります。
③子どもが話した言葉を、親がそのままメモする
子どもと話しながら、親御さんは裏紙やメモ帳に子どもの発言をそのままサッとメモしてあげてください。
子どもは「話すこと」と「書くこと」を同時にやろうとすると頭がパンクしてしまいます。
まずは「話すこと」に集中させてあげましょう。
親は横で、
・川の水が氷みたいに冷たかった
・思わず「つめたっ!」と叫んだ
・魚がぬるぬるしていた
・つかまえたのに逃げられた
・悔しくてもう一回探した
と、どんどんメモしていきます。
きれいな文章に直す必要はありません。
そして最後に、
とメモを見せてあげてください。
「何を書けばいいか分からない」状態だった子も、目の前に材料が並んでいれば、
「これを書けばいいんだ!」
と作文へのハードルがぐっと下がります。
まとめ:「楽しかったです」で止まったら、まず話すことから始めよう
作文が苦手な子に「もっと詳しく書いて」と言っても、なかなか言葉は出てきません。
そんなときは、いきなり原稿用紙に向かわせるのではなく、まず親子で話すことから始めてみてください。
親が少し質問するだけで、「楽しかった」の奥に隠れていた、その子なりの出来事や気持ちが少しずつ出てきます。
出てきた言葉は、親がメモしてあげればOKです。
作文は、最初から上手な文章を書く必要はありません。
次に「楽しかったです」で手が止まったら、
「一番びっくりした場面はどこ?」
と声をかけてみてください。
きっと、その子にしか書けない活き活きとした言葉が、どんどんあふれ出してくるはずです!

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