【元国語教師が解説】「ヤバい・すごい」卒業!子の語彙力を伸ばす日常の「言い換え」声かけ5選

語彙力を育てる

「今日のご飯やばい!」
(※美味しかったらしい)

「今日はAくん、マジですごかった!」
(※感動したらしい)

……いや、会話のバリエーション「ヤバい」と「すごい」しかないんかーい!と思わずツッコミを入れたくなることありませんか?(笑)

元国語教師の私も、わが子の語彙力の「省エネモード」には頭を抱える日々です。

でも、子どもの語彙力を伸ばすために、特別な勉強やドリルを用意する必要はありません。

毎日の会話で、親が「ちょっと言い換えて返す」だけ。
それだけでも、子どもが新しい言葉に出会うきっかけを作れます。

今回は、家庭で今日からすぐ使える「言い換えテクニック5選」を、具体例たっぷりでご紹介します!

なぜ今、子どもの「語彙力」が重要なのか?

具体的な声かけの前に、なぜ家庭での語彙力育成が大切なのかを2つの理由から解説します。

① 語彙力=「思考力」と「感情を表現する力」の土台

国語教師をしていたころ、子どもたちの作文を読んでいると、

「楽しかったです」
「すごいと思いました」

で終わってしまう文章によく出会いました。

でも、詳しく話を聞いてみると、

「え、それめっちゃ素敵なこと考えてるやん!」

と感心することばかりだったんです。

子どもは「考えていない」のではなく、「表す言葉をまだ知らない」だけ。

知っている言葉が増えると、自分の中にある複雑な気持ちも、少しずつ具体的に表現できるようになります。

「嫌だった!」
→「頑張ったのに負けて悔しかった

「うざい!」
→「自分だけ誘ってもらえなくて寂しかった

このように、自分の中のモヤモヤに言葉をつけられるようになると、「嫌だった!」だけではなく、「私はこう感じた」と相手に伝えるための選択肢も増えていきます。

語彙力は国語のテストだけではなく、自分の気持ちを理解し、相手に伝えるためにも大切な力なのです。

② 語彙力=文章を読み解くための「知識の引き出し」

国語の文章を読んでいるとき、子どもがつまずく原因の一つに、「本文に出てくる言葉の意味が分からない」ことがあります。

例えば、文章中に、

「露骨に嫌な顔をした」

と書かれていたとします。

「露骨」という言葉の意味が分からなければ、その人物がどんな表情をしていたのか、情景をイメージしにくくなります。

一方、知っている言葉が増えるほど、文章の内容をイメージしながら読み進めることができます。

だからこそ、幼児期〜小学生のうちから日常生活の中でさまざまな言葉に触れておくことは、将来の「読む力」を支える土台にもなります。

「ヤバい」「すごい」がダメなわけではない

ここで、一番大切なお話から。

「ヤバい」「すごい」を禁止する必要はありません。

「またヤバいって言ってる!」
「『すごい』ばっかり使わないの!」

と注意したくなることもあるかもしれません。

でも、「ヤバい」も「すごい」も、子どもが自分の気持ちを表現するために選んだ言葉です。

大切なのは、その言葉を取り上げること(禁止)ではなく、その先にある言葉をそっと足してあげることだと私は思っています。

例えば、「今日の試合、ヤバかった!」という一言の中にも、いろいろな気持ちが隠れています。

  • 最後までどっちが勝つか分からなくてハラハラした
  • 最後の逆転の瞬間、めちゃくちゃ興奮した
  • 〇〇くんのシュートがかっこよくて感動した

子どもがまだうまく形にできていない気持ちに、大人がそっと言葉を添えてあげる。

この積み重ねこそが、子どもの「言葉の引き出し」を少しずつ増やしていくのです。

子どもの語彙力を伸ばす!日常の「言い換え」声かけ5選

それでは、今日から使える具体的な言い換えをご紹介します。

ポイントは、子どもの言葉を否定せず、親が「こんな言い方もあるよ」と言葉を足してあげることです。

① 「ヤバい!」→ 大人が感情のバリエーションを足して返す

子どもが「このゲーム、ヤバい!」と言ったとき、

「『ヤバい』じゃなくて、もっとちゃんと説明して」

と返してしまうと、楽しかったはずの会話が一気に「取り調べ」になってしまいます。

子どもに言い換えさせるのではなく、大人が感じたことや感情の選択肢を足して返してみましょう。

👦 子ども
「このゲーム、ヤバい!」

👩 親
「最後ギリギリでハラハラしたね!
「この技、迫力あって大興奮やな!」

「ハラハラ」「興奮」「迫力がある」といった言葉を会話の中に置いておくだけでも、子どもは自然と新しい語彙に出会えます。

② 「すごい!」→「どこがすごかった?」の中身を一緒に探す

「今日〇〇くん、すごかったで!」と言われたら、言葉を増やす絶好のチャンスです!

「へぇ、すごかったんや!」で終わらせず、中身を少し具体的にしてみます。

👦 子ども
「今日、Aくん体育の時間すごかった!」

👩 親
「体育、何したの?」

👦 子ども
「リレー!」

👩 親
「Aくん、走るのめちゃくちゃ速かったん?」
「最後まで諦めへんかったところがかっこよかったんかな?」

「すごい」の中身には、

  • 足が速い
  • 発想がおもしろい
  • 粘り強い
  • 優しい
  • 勇気がある

など、さまざまな表現があります。

「何がすごかったんだろう?」と親子で一緒に探すことで、人や物事を見る視点も少しずつ細かくなっていきます。

③ 「これ・あれ」→具体的な「名詞・形容詞」を添えて返す

家族だからこそ成立してしまうのが、こんな会話。

👦 子ども
「あっちの、あれ取って!」

👩 親
「はい、どうぞ」

でも、この会話、実はとてももったいないんです。

「ちゃんと『コップ』って言いなさい」と訂正する必要はありません。

👦 子ども
「あっちの、あれ取って!」

👩 親
「テーブルの上にある、透明なガラスのコップね。はいどうぞ!」

親が自然に、

「透明な」「丸い」「ざらざらした」「一番奥にある」

といった言葉を添えて返してみます。

物の特徴を具体的に表す言葉に触れる経験は、作文などで「詳しく説明する力」にもつながっていきます。

④ 「おいしい・楽しい」→五感を刺激するオノマトペを混ぜる

「サクサク」「しっとり」「キラキラ」「カサカサ」などのオノマトペは、様子をイメージしやすい言葉です。

特に、食事の時間は言葉を増やすチャンスがいっぱい。

👦 子ども
「これ、おいしい!」

👩 親
「ほんとやね!外はサクサクして、中はふわふわやね」

外を歩いているときなら、

「雨がポツポツ降ってきたね」
「落ち葉がカサカサ鳴ってる!」

でもOKです。

見たもの・聞いたもの・触ったもの・食べたものを、そのまま言葉にしてみる。

特別な教材がなくても、日常生活そのものが言葉に触れる場所になります。

⑤ 「普通・楽しかった」→親が勝手に予想して具体化してみる

学校から帰ってきた子どもに、

「今日どうだった?」

と聞いたら、

「普通。」

で終了……。

あるあるですよね(笑)。

「普通って何?」と詰め寄るのではなく、一度受け止めたうえで、親が勝手に予想してみます。

👦 子ども
「普通。」

👩 親
「今日、体育でドッジボールするって言ってたよね。暑くてクタクタになった?」

👦 子ども
「最後まで残れて楽しかった!」

👩 親
「それはうれしいね!当てられそうでドキドキしなかった?」

親が楽しそうに予想してみることで会話が広がり、「クタクタ」「ドキドキ」といった言葉にも自然に触れられます。

「言い換え」声かけを成功させるための2つの注意点

日常会話で実践するときに、ぜひ覚えておいてほしいことが2つあります。

① 子どもを「取り調べ」ない・言わせようとしすぎない

「元国語教師なら、家でも子どもの言葉遣いを細かく直しているのでは?」と思われるかもしれませんが……

そんなことはありません!

私だって日常では、

「これ、めっちゃおいしいな!」
「それヤバいな!」

と普通に言っています(笑)。

だって、親子の会話は国語の授業ではないからです。

「別の言葉で言ってみて」
「もっと詳しく説明して」

と毎回言われたら、大人だって話すのが嫌になりますよね。

大切なのは、言葉を直すことではなく、「子どもの言葉の横に、別の言葉をそっと置いておく」こと。

たとえば、

子ども:「ヤバい!」
親:「ほんとや、迫力あるね!

子ども:「これおいしい!」
親:「サクサクしてるよね!」

これくらいで十分です。

今日耳にした「迫力がある」という言葉を、明日すぐ使うとは限りません。

でも何度も耳にするうちに、「こういうときに使う言葉なんだ」と、少しずつ子どもの中に蓄えられていきます。

② 親自身が「難しい言葉」を使う必要はない

「親自身の語彙力がないとダメなのかな……」

とプレッシャーを感じる必要はありません。

難しい四字熟語や、きれいな文学的表現を使う必要はゼロです。

たとえば夕焼けを見て「きれいだな」と思ったら、そこに一つだけ見た目や感覚を足してみるだけ。

「きれいだね」
+「雲までオレンジ色になってるね

「暑いな」
+「外に出た瞬間、モワッとするな

それだけでも、子どもが触れる言葉は増えていきます。

語彙力を育てるというのは、難しい単語を暗記することではありません。

「自分が感じたことを、少しだけ詳しく言葉にできるようになること」です。

これは学校の作文でも同じです。

難しい言葉をたくさん使っているからといって、必ずしも素晴らしい作文になるわけではありません。

むしろ、自分の等身大の言葉で丁寧に表現された文章にこそ、書いた人の気持ちが表れます。

「正しい表現」を教え込もうとするのではなく、親自身も「今日はどんな言葉がぴったりかな?」と、お子さんと一緒に言葉探しを楽しんでみてくださいね。

まとめ|毎日の「ほんの一言」が子どもの言葉の引き出しになる

子どもの語彙力を育てるために、毎日特別な勉強時間を作る必要はありません。

まずは、いつもの親子の会話に「一言だけ具体的な言葉を足してみる」ことから始めてみてください。

今日のおやつ、ヤバい!

「ほんまやな!サクサクして香ばしいな」

まずは、それだけで十分です。

家庭で少しずつストックされた言葉は、いつか子どもが「自分の気持ちを文章で伝えたいとき」「誰かに自分の気持ちを分かってほしいとき」に、言葉を選ぶための引き出しになってくれます。

特別な教材も、難しい声かけも必要ありません。

まずは今日の夕食の会話から、子どもに一つだけ「新しい言葉のパス」を出してみませんか?

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