「漢字ドリルをノートいっぱいに書いて練習したのに、翌日のテストではさっぱり……」
そんな姿を見ると、つい「もっと集中しなさい!」と言いたくなりますよね。
ですが、元国語教師として多くの子を見てきて感じるのは、「覚えられない=努力が足りない」とは限らないということです。
宿題のノートはびっしり埋まっているのに、テストになると書けない。
そんな子は、練習量が足りないのではなく、「覚える」より「書く作業」に時間を使ってしまっているのかもしれません。
必要なのは、さらに10回、20回と書くことではありません。
「何回書くか」より「どうやって覚えるか」を変えてみる。
この記事では、何度書いても漢字が定着しにくい子に見られやすい3つの特徴と、子どもに合わせて試せる3つの覚え方をご紹介します。
「あと10回書き直しなさい!」と言う前に、ぜひ試してみてくださいね。
何度書いても漢字が覚えられない子に共通する3つの特徴
「昨日あんなに書いたのに、もう忘れてる……」
そう思うと、つい「練習不足なのかな」と考えてしまいますよね。
でも、ちょっと待って!
「たくさん書いた=たくさん覚えた」とは限りません。
何度書いても定着しにくいときは、練習の「量」ではなく「やり方」に原因が隠れていることがあります。
まずは、漢字がなかなか覚えられないときに起こりやすい3つの状態を見ていきましょう。
①「手の作業」になっていて頭を使えていない(無心で10回書き)
ノートにびっしり書かれた、
真面目に宿題に向き合っているように見えますが、何回か書くうちに「覚える」よりも「マスを埋める」ことが目的になってしまうことがあります。
お手本を見ながら手だけを動かし、頭の中では、
- 「今日の給食なんだったっけ」
- 「早く終わらせてYouTube見たいな」
- 「あと何個書けば終わり?」
なんて別のことを考えている状態です。
元国語教師として感じたこと
教員時代にも、ノートをびっしり埋めて「昨日ちゃんと練習したのに……」と落ち込む生徒を何人も見てきました。決してサボっているわけではありません。一生懸命「書くこと」はできていても、「思い出す練習」が足りていなかったのです。
そこで取り入れたいのが、途中でお手本を隠すこと。
10回続けて書く代わりに…
3回書く
↓
紙で隠す
↓
何も見ずに1回書く
たったこれだけでも、「見ながら写す」から「頭の中から思い出す」に変わります。
大切なのは「手を何回動かしたか」ではなく、「どんな字だったっけ?」と何回思い出そうとしたかです。
②「部首(パーツ)」のまとまりで捉えられていない
「あと1本線が足りない」「左右のパーツが逆になっている」などの惜しいミス、よくありませんか?
そんなときは、漢字一文字を「無数の線の集まり」として覚えようとしているのかもしれません。
たとえば「語」なら…
×「横棒を書いて、その下に……次はどこだっけ?」
〇「言(ごんべん)」+「吾」の2つのブロック
一画ずつバラバラに覚えようとすると、画数が増えるほど覚えるものも増えてしまいます。
そんな子には、レゴブロックを組み立てるように、
と聞いてみてください。
休 → 「亻(にんべん)」+「木」
海 → 「氵(さんずい)」+「毎」
語 → 「言(ごんべん)」+「吾」
さらに、
「この左側、前に見たことない?」
「『海』と『池』って、同じ“さんずい”がついてるね!」
と、すでに知っている漢字との共通点を探すのもおすすめです。
バラバラだった線を「意味のあるパーツ」として見られるようになると、複雑な漢字も整理しやすくなります。
③単語の意味や使われ方を理解していない
漢字テストで、「惜しいけれど、そんな漢字はない!」という謎の創作漢字を書いてしまうこと、ありませんか?
そんなときは、その漢字を「意味のある言葉」ではなく「覚えなければいけない形」として捉えている可能性があります。
たとえば「深」という漢字。
「しん・ふかい」とだけ覚える
「深 深 深 深……」とひたすら書く
これだけでは、漢字と実際の言葉がなかなか結びつきません。
大人で言えば意味も分からないアラビア文字をひたすら模写させられているようなもの。苦痛でしかありません。
「深い海」 → 底が見えないくらい深い海
「深い穴」 → 落ちたら怖そうな穴
「深夜」 → みんなが寝ている夜遅い時間
こんなふうに具体的な言葉やイメージとセットにすると、漢字がぐっと身近になります。
親子でクイズにしても◎
「この漢字を使った言葉、ほかに何か知ってる?」
「あ、それ知ってる!」と自分の知識とつながった瞬間、ただの形だった漢字が「使える言葉」に変わっていきます。
うちの子にはどれが合う?覚えやすさに合わせた「タイプ別」漢字練習
「じゃあ、結局どうやって覚えればいいの?」と思いますよね。
漢字の覚え方は、ひとつではありません。
- 形を見ると覚えやすい
- 声に出すと残りやすい
- 意味が分かると覚えやすい
など、子どもによって「これだと入りやすい」という方法は違います。
「うちの子は絶対このタイプ!」と決めなくて大丈夫。
その日の漢字によって方法を変えてもOKです。「これなら覚えやすそう」を宝探し感覚で見つけてみてくださいね。
①【見て覚えやすい子】「指なぞり&部首の色分け」で形をキャッチする
普段からイラストを描くのが好きだったり、間違い探しや迷路が得意だったりする子は、漢字を「形(画像)」として捉えるのが得意かもしれません。
このタイプの子に「とにかく鉛筆で10回書きなさい!」とやらせるのは逆効果。書く作業に意識がいってしまい、せっかくの「目の良さ」が活かせません。まずは鉛筆を置き、しっかり「観察する」時間を作ってあげましょう。
おすすめの4ステップ
1お手本をじっくり見る
2文字を指で大きくなぞる
3パーツごとに2色程度で囲む
4隠して1回書いてみる
たとえば「海」なら、「氵(さんずい)」と「毎」をそれぞれ囲んで、2つのパーツとして観察します。
カラフルにしすぎると「色を塗ること」が目的になってしまいます。あくまで漢字のパーツを見分けるために使いましょう。
もし間違えても、すぐに正解を教える必要はありません。
と「間違い探し」にしてみると、自分で形を観察する練習にもなりますよ。
②【耳から覚えやすい子】「声に出す&リズム」で覚える
テレビのCMソングやYouTubeのフレーズを一度聴いただけで口ずさんだり、親の雑談をよく覚えていたりする子は、耳からの情報処理が得意かもしれません。
このタイプの子にとって、静かな部屋で黙々とノートに向かうだけの練習は苦痛そのもの。「音」がないと、脳のスイッチがなかなか入りません。それなら、漢字練習にどんどん声をプラスしてあげましょう!
たとえば「親」なら
「立って〜、木の上に登って〜、見る!」
と、指や鉛筆を動かしながら、自分なりの言葉にして唱えてみます。
少しヘンテコなくらいで大丈夫。
教員時代にも、ちょっと変わった語呂合わせを作ると、子どもたちが「何それ(笑)」と笑いながら覚えてくれることがありました。本人が思い出すきっかけになるなら、それで十分です。
- 読み方を言いながら書く
- パーツの名前を声に出す
- 自分だけのリズムや語呂合わせを作る
目と手だけではなく、口や耳も一緒に使ってみる。
それだけで、いつもの漢字練習が少し楽しくなるかもしれません。
③【意味から覚えやすい子】「熟語・短文づくり」でストーリー化する
「これってどういう意味?」「なんでこうなるの?」とよく質問してきたり、とにかくおしゃべりが大好きだったりする子は、理屈やストーリーで理解する「意味先行」のタイプかもしれません。
このタイプの子に、漢字単体で「『暑』を10回書こう!」と差し出しても、脳は「で、結局それ何なの?」と拒絶反応を起こしてしまいます。文字の形だけを暗記させるのではなく、自分の知識や生活と結びつけてあげるのが最大のコツです。
おすすめは、ノートの余白に「超・かんたんな短文」をひとつ作ること。
覚える漢字:「暑」
熟語 → 「猛暑」「残暑」
短文 → 「今日は暑いからアイス食べたい!」
これだけで十分です。
立派な作文を作る必要なんてありません。
「宿題が多くて悲しい」
「給食のカレーは最高!」
「明日は早く帰りたい」
くらいの、その子らしい文章でOK。
むしろ、自分が普段使っているリアルな言葉とつながったほうが、「あのとき使った字だ!」と記憶に残ります。
「どんな場面で使いそう?」
と少し会話をしながら、漢字を「覚える形」から「使える言葉」へ変えてあげましょう。
💡 日常会話の中で、楽しみながら子どもの「言葉の引き出し(語彙力)」を増やしてあげたい方は、こちらの記事も参考にしてみてくださいね。
家庭で今日からできる!漢字練習を「作業」にしない3つのコツ
ここまでいろいろな方法をご紹介しましたが、毎日の宿題ですべてを完璧にやる必要はありません。
忙しい毎日のなかで、漢字一文字に10分も20分も付き合っていたら、お互いに疲れちゃいますよね。
今日から意識したいのは、たった3つ。
「隠す」「間違いを探す」「翌日に思い出す」
この3つを少し入れるだけで、「ノートを埋める作業」から「覚えるための練習」にガラッと変わりますよ。
①「10回書く」より「隠して1回」を入れる
ノートのお手本を見ながらダラダラ書くのをやめて、途中でお手本をパッと隠す時間を作ってみてください。
やり方はとっても簡単!
① 3回だけ、見ながら書く
② 手や紙でお手本を隠す
③ 何も見ずに1回書く
④ お手本と答え合わせする
もし書けなくても、「なんで覚えてないの!」と怒る必要はありません。
「えーっと、右側なんだったっけ……?」と思い出そうとすること自体が練習です。分からなければ、もう一度お手本を見ればOK!
「忘れた=失敗」ではありません。
「思い出す練習ができてラッキー!」くらいの軽い気持ちで、気軽に取り入れてみてくださいね。
②間違えたら「10回書き直し」ではなく「どこが違った?」と聞く
漢字テストでバツがつくと、つい言いたくなるのが、
というひと言。
でも、書き直す前に一度だけ、こう聞いてみてください。
同じ「間違えた」でも、原因はいろいろあります。
- 点や線が1本足りなかった
- 部首の形を勘違いしていた
- 左右を逆に覚えていた
- 似た漢字と混ざっていた
「あ!ここ、線が1本足りなかった!」と本人が気づけば、次に書くときは自然とそこに注意が向きます。
10回の丸写しより
「間違えた場所を自分で見つける10秒」
まずはここから始めてみてください。
③翌日に「1問だけ」もう一度出す
宿題が終わって「できた!」となっても、翌日になると「あれ……?」となることがあります。
そこでおすすめなのが、翌日に「1文字だけ」抜き打ちテストをしてみることです。
わざわざテスト用紙を作る必要はありません。
宿題を始める前や夕飯の前に、裏紙の端っこへ一文字書いてもらうくらいで十分です。
書けたら
「おおー!昨日のまだ覚えてる!すごい!」と全力で褒めて終了。
忘れていたら
「どんな字だったっけ?一回だけ見てみよ」と一緒に見るだけ。
一日にまとめて何度も書くより、日をまたいで「まだ覚えてるかな?」と思い出す機会を作る。
「数日かけて、ちょこちょこ思い出す」
くらいのノリで付き合ってあげるのが、一番ラクに定着させる近道ですよ。
💡 「漢字だけでなく、国語全体の勉強法や家庭での関わり方も知りたい」という方は、元国語教師の視点でまとめたこちらのロードマップもぜひチェックしてみてください。
まとめ:漢字学習は「回数」より「頭の使い方」
漢字がなかなか覚えられないと、つい「もっと回数を増やさなきゃ」と思ってしまいますよね。
でも、大切なのはノートを何マス埋めたかだけではありません。
無心で10回作業のように書くよりも、「どんな形だっけ?」と思い出したり、パーツや意味に注目したりする1回の方が、ずっと記憶に残ります。
こうした小さな「考える時間」を入れるだけで、同じ漢字練習でも中身は大きく変わります。
何度書いても覚えられないときは
「もっと書きなさい!」ではなく、
「別の覚え方、試してみよっか」
と声をかけてみてください。
「漢字が苦手」と決めつける前に、その子が「これなら覚えやすい!」と思える方法を親子で探してみる。
毎日の漢字練習が、親子でイライラする時間ではなく、「今日はどの方法で覚えてみる?」と試せる時間になったらいいですね。

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