2歳頃になると、単語数が増え、おしゃべりが上手になってくる子も多くなります。そのため、「2歳を過ぎたのにあまり話さない…」「健診で“言葉が少ないかも”と言われて心配…」と、不安を感じているママやパパもいるのではないでしょうか？
子どもの成長は一人ひとり違うとわかっていても、どうしても心配になってしまうのが親心。それは、子どもを思う気持ちのあらわれです。
この記事では、2歳児のことばの発達の目安や言葉が遅れる原因、家庭でできる働きかけについて詳しくご紹介します。「もしかしたら、うちの子、言葉が遅いのかも…」と不安を感じているママやパパの心が、少しでも軽くなりますように。
家庭の中で、子どものことばの芽をあたたかく育てていくヒントになれば幸いです。
2歳児のことばの発達の目安
2歳頃になると、急に語彙が増えてくる子もいれば、ゆっくりと自分のペースで言葉を話し始める子もいます。個人差はありますが、一般的には、次のような発達が見られることが多いとされています。
- 語彙が増えてくる(200～500語程度)
- 「ワンワンいた」「ママきた」など２語文で話し始める
- 「〇〇の！」など、自分の名前を使って話す
- 身近な物や人の名前が分かる
- 「これなに？」など質問をするようになる
- 「これ持ってきて」「靴はいて」などの簡単な指示を理解できる
もちろん、これらすべてに当てはまらないからといって、すぐに「遅れている」と心配する必要はありません。
子どもにはそれぞれのペースがあり、ことばの発達も「早い・遅い」ではなく、「得意なこと・ゆっくり育つこと」があるだけかもしれません。
2歳頃は、ことばの発達に個人差が特に大きくみられる時期です。たとえ話す言葉が少なくても、大人の話す内容をしっかり理解しているようであれば、少しずつ大人の言った言葉を真似して話すようになっていきます。
2歳児の言葉が遅れる原因
「もしかしてうちの子、言葉が遅れているのでは…？」と感じたとき、気になるのが“原因”ですよね。
実際には、特別な原因があるわけではなく、その子自身のペースによる個人差であることが多いです。しかし、中には聴力や発達に関わる問題が隠れている場合もあります。
ここでは、2歳児の言葉の発達がゆっくりになる主な原因についてご紹介します。
個人差によるもの
2歳児の言葉の発達の遅れにおいて、最も多い原因が個人差によるものです。兄弟姉妹でも言葉の出る時期はバラバラで、「上の子は早かったのに、下の子はなかなか話さなかった」という話もよくありますよね。
「話さない＝言葉を理解できていない」ということではありません。言葉として発するのはゆっくりでも、聞く力や理解力はしっかり育っている子もたくさんいます。
私自身も、我が子の言葉の発達について健診で指摘され、心配したこともありました。でもある時期を境に一気に言葉が出てきたので、「あの時は聞く力を育てている途中だったのかな」と感じています。
環境によるもの
家庭での会話の量や、大人の声かけの仕方など、言葉に触れる環境も発達に影響を与えることがあります。
ママやパパが忙しくてお子さんに話しかける時間が少なかったり、大人が子どもの気持ちを先回りして言葉にしてしまっていたりすると、自分で言葉を発する機会が減ってしまうこともあります。
子どもが「これ取って」と言う前に、「これが欲しいんだね」と親が察して渡してしまうことってありますよね。もちろん、子どもへの愛情からの行動ですが、その分お子さんの「言葉を使って伝える経験」を奪ってしまうこともあるのです。
ただ、「環境のせいかも…」「もっと話しかけなきゃ」とプレッシャーに感じる必要はありません。日常の中で、子どもの目線に合わせて「積み木たのしいね」「これはなあに？」などと声をかけるだけでも、子どもにとっては十分な刺激になります。
聴力の問題によるもの
聴力の問題(聞こえにくさ)により、言葉が遅れているケースもあります。中耳炎などの一時的な原因や、聴覚の異常により、音がうまく聞き取れていない場合、言葉を覚えることが難しくなることがあります。
たとえば、次のような様子が見られたら注意が必要です。
- 名前を呼んでも反応しない、または反応が薄い
- 指示が通りにくい
- 聞き返しが多い
特に、正面から話しかけたときには反応があるけれど、背後から話しかけると反応しない場合などは、耳の聞こえを確認してみる方がよいかもしれません。
重度の難聴は早い時期に気付かれることが多いですが、中等度以下の難聴は気づきにくく、発見が遅れることもあります。「ちょっと聞こえが悪いのかも…」と感じたら、早めに耳鼻科を受診することをおすすめします。
発達に関わる障害の可能性も
まれに、発達障害が言葉の遅れに影響していることもあります。発達障害とは、生まれつき脳機能の発達に特性がある状態のことを指し、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、SLD(限局性学習症)、知的障害などの種類があります。
特にASD(自閉スペクトラム症)は、言葉の発達に影響が出やすいとされています。言葉の遅れのほかに、以下のような様子が見られる場合は、一度専門機関に相談してみると安心です。
- 対人関係のやりとりが少ない
- 目が合いにくい
- 名前を呼んでも反応が薄い
- こだわりが強い
- 集中力が続かない、落ち着きがない
2歳頃はまだ発達の途中の年齢なので、すぐに「発達障害である」と診断することが難しいこともあります。しかし、早期の気づきによって、適切な支援につながることも多くあります。気になる点があれば、ひとりで悩まず、自治体の保健センターや小児科などに相談してみましょう。
言葉を育てるために家庭でできること
言葉の力は、毎日の暮らしの中で少しずつ育っていくものです。
元国語教師として、そして子どもを育てる一人の母として、「ことばを育む土台」は家庭にこそあると感じています。
ここでは、2歳児の言葉の発達を促すために、特別な準備をしなくても今日から始められる、家庭でできる働きかけをご紹介します。
ママやパパが無理なく、お子さんと一緒に楽しみながら取り組める内容です。お子さんとの日々の関りの中で言葉の芽を育んでいきましょう。
子どもの言葉を「待つ」時間を大切に
国語の授業でも「考えを言葉にする力」は大切にされていますが、それは時間をかけて育つもの。2歳の子どもにとっても同じです。自分の気持ちや考えを言葉にするには、まだまだ時間が必要です。
つい「こう言いたいんだよね」と大人が先回りしてしまいそうになりますが、お子さんが自分の言葉で伝えようとするのを、まずはあたたかく見守ってみてください。「今、何を言おうとしているのかな？」と待ってあげることで、子どもは安心して言葉を紡ごうとします。
たとえ「こう言いたいんだな」と分かっても、グッとこらえてお子さんが自分で伝えてくれるまで待ってあげましょう。そして、言葉にできたときは、「そうなんだね！」としっかり受け止めてあげることが大切です。
2歳頃は、発音が不明瞭で伝わりにくいこともありますが、「なんて言ってるの？」と何度も聞き返すと、子どもの話す意欲をなくしてしまうこともあります。2回ほど聞いてもわからなければ、「そうなんだね」と、気持ちを受け止める姿勢を大切にしてください。
何よりも大切なのは、お子さんの「話したい」という気持ちを引き出すことです。お子さんが安心して言葉を紡げる環境を、家庭の中で整えていきましょう。
「語りかけ」は“実況中継”のように
子どもは、身の回りの言葉を耳からたくさん吸収しています。そのため、ママやパパの語りかけはとっても大切です。
例えば、お子さんとのお散歩中、「今、赤い車が通ったね」「大きな犬がいるね」など、その場で見たり聞いたりしたことを“実況中継”するように声に出して伝えてみましょう。
意味がすぐに分からなくても、多くの語彙に触れることに意味があります。ことばのリズムや響きに日常的に触れることが、豊かなことばの土台づくりにつながっていきます。
絵本の時間は“心と言葉のやりとり”
絵本は、子どものことばの世界を広げる強い味方です。ただ絵本を読むだけでもたくさんの言葉にふれられますが、もっと言葉を育てるには「親子のやりとり」がカギになります。
例えば、絵を見ながら「これはネコかな？」「この赤い食べ物はなにかな？」と問いかけてみてください。お子さんの答えを受け止めることで、自然と親子の会話が生まれます。
少しずつ言葉を覚えてきたら、「〇〇くん(登場人物)、どんな気持ちかな？」など感情に関する問いかけをすることもおすすめです。「うれしい」「たのしい」「かなしい」といった言葉を覚えるきっかけになります。
2歳頃は、ストーリーが長い絵本は飽きてしまうこともあるので、短くて展開のわかりやすい絵本から始めてみましょう。乗り物や動物など、お子さんの「好き」に合わせて絵本を選ぶと、楽しく言葉に親しめますよ。
子どもの言葉を“受け止めて返す”
2歳児の言葉は、まだ赤ちゃん言葉が混ざっていたり、発音があいまいだったりします。それでも、少しずつ正しい発音や語彙を身に付けていく大切な時期に入ってきます。
たとえば、お子さんが「ワンワン」と言った時に「違うよ、犬だよ」と言い直すよりも、「そうだね、犬だね」とやさしく受け止めつつ、正しい言葉で返してあげましょう。
子どもは、自分の言葉が「伝わった！」という実感を通して、話すことに自信をつけていきます。
これは、国語で大切にされている「対話のキャッチボール」のはじまり。大人がしっかり受け止めて返していくことで、言葉のやりとりが楽しくなり、自然と話す力も育っていきます。
2歳児の言葉が遅いと感じたときの相談先
どんなに日々の声かけや働きかけをしていても、「なかなか言葉が出ない…」と感じることがあるかもしれません。そんなときは、一人で抱え込まず、専門機関に相談してみるのもひとつの方法です。
以下のような相談先がありますので、「ちょっと気になるかも」と思った時には、気軽に連絡してみてくださいね。
市区町村の保健センター
定期健診（1歳半健診・3歳児健診）以外でも、個別で子どもの発達や言葉について相談に乗ってくれます。言語聴覚士や保健師と連携して支援を受けられることもあります。
地域の子育て支援センター
日常的に相談しやすく、ちょっとした不安でも気軽に話すことができます。必要に応じて専門機関への橋渡しもしてくれます。
かかりつけの小児科
身体面の健康と合わせて、発達についても相談できます。普段の診察の際に、「言葉が遅い気がするのですが…」と伝えてみましょう。必要に応じて、発達専門の医療機関を紹介してもらえることもあります。
発達支援センターや療育機関
言葉の遅れや発達が気になるお子さんの支援を行う専門機関です。早期の相談が、適切な支援や安心につながります。地域によって名称や利用方法が異なるので、市町村の窓口に問い合わせてみてください。
焦らなくても大丈夫！ことばの芽をあたたかく育てていこう
「うちの子、言葉が遅いかも…」と、周りの子と比べて不安になることもあるかもしれません。でも、2歳頃の言葉の発達には、思っている以上に個人差があります。
実際、我が家の子どもたちも三人とも、市町村の定期健診で「言葉がゆっくりめですね」と言われました。特に一人目のときは、「私の育て方が間違っているのかも…」「何か発達に問題があるのかも…」と毎日普段でいっぱいだったのを覚えています。「言葉を早く覚えさせなきゃ」と、焦る気持ちにもなりました。
でもある日を境に、急にいろんな言葉を話し始めるようになりました。今では、朝起きた瞬間から寝るまでおしゃべりが止まらないくらい、言葉が大好きな子どもたちに育っています。
「話せるようにしなきゃ」と力が入ってしまうと、親もつらくなりますし、その緊張感は子どもにも伝わってしまうんですよね。だからこそ、できることから、無理のない範囲で。ママやパパ自身が気負わず、楽しみながら言葉を育てていくことが、一番の近道なのかもしれません。
無理に急がせなくても大丈夫。お子さんそれぞれのペースで、ゆっくりと言葉が育っていきます。
子どもにとって一番の安心は、ママやパパのやさしいまなざしです。そのやさしいまなざしが、きっとお子さんの「ことばの芽」をそっと包み込み、ゆっくりと大きく伸ばしてくれるはずです。
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